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夢追うひとびと
# 6
「忘れられていた布たちに再び命を」
赤間洋子さん(58歳)
代々続く酒屋を営む家で育った赤間洋子さん。 自宅には着物や布がたくさんあり、ずっとその活用方法に興味を持っていたと言います。 酒屋が忙しくて時間がないときも、少しの時間を見つけては、一升瓶専用の手提げや コースターなどを作ってお客さんにプレゼントをしていました。 そんな赤間さんが、数年前から、自宅の着物や布を使って、ジャケットやスカートに作りかえる 「布のリメイク」を本格的に始めました。今ではたくさんの注文を受けるまでになった赤間さんに、 「布のリメイク」という目新しい創作活動の醍醐味を伺いました。
赤間洋子さん

白の絞り染めの着物をジャケットにリメイク。 絞りの微妙な色使いと風合いが、豪華さを演出。

織りが珍しい白の大島紬をブラウスと スカートにリメイク。ブラウスの襟やスカートの 裾のデザインに凝った作品。

黒の着物の柄にほれ込み、赤い布と 組み合わせタペストリーに。 木製のポールを探して、特別に作ってもらった。

友人のご主人の思い出のエルメスのネクタイ。 目も覚める赤を活かすために紺のネクタイと 組み合わせてバーデンダー風のベストにリメイク。

大島紬の男物の着物をコートにリメイク。 裏地は、リメンスの男物の長襦袢を使用。 生地がしっかりしているので、軽くて温かい。

夏帯の朝顔の絵柄と色合いに惹かれて アロハシャツにリメイク。縦横の糸がしっかりして いるので、型崩れもない。

男物の大島紬をジャケット風ブラウスにリメイク。 軽くて着やすい。アクセントにポケットチーフも添えて。
-- 「もったいない」という想いが最初です。
 赤間さんが着物を洋服にリメイクし始めたきっかけは、何だったのか?
「自宅には祖父が生前着ていた西陣織や大島紬などの着物がたくさんありました。 それらを着る機会は少なかったのですが、高価なものもあり、 捨ててしまうのはもったいないと思っていて、布地を別のものに活用できないかと考え、 リメイクするようになったのです。田中千代服装学院を卒業し、 ファッション関係の仕事をしていた時期もあって、布を縫製したり、洋服をつくったりすることには もともと興味を持っていたということもありますね」
 酒屋で働いていた時にも時間を見つけては、縫製を楽しんでいた赤間さんだが、 4、5年前から、着物などの古い布を洋服やアクセサリー、 バッグなどに大胆に作り代えることに楽しみを見出し、本格的な創作活動に入る。
「他の人が着物を洋服につくり変えたものを見かけることはありましたが、 自分が着たいと思えるようなデザインのものにはなかなか出会えませんでした。 だからこそ、自分で作るからには、単に布の“リサイクル”をするのではなく、 ファッションとしてカッコいいデザインのものに“リメイク”をし、 新しい洋服として命を吹き込んでみようと考えたのです」
  自分でデザインしたコートやジャケット、ツーピースやスーツを着て出掛けると、 人々の目に留まり、最近は「私にも作ってほしいわ」というリクエストを数多くもらうようになり 「個展を開催してみては」というお誘いまで受けるようになった。






-- 布を求めて。
「最近は色々な布と出会うことが楽しくて、しょっちゅう出歩いています。 特に奈良や京都の古布が好きで、もう100回以上は行ったでしょうか。 京都では毎月21日に市が出るので、その日を狙ってよく出掛けます。 人にとっては価値がなさそうなものでも、私にとっては宝の山のように見えたりします。 京都や奈良には、特に歴史を感じさせる古い時代の布が多いのです。 布を通して、昔の人の生活を想像するのはとても楽しく、 古布を見ているだけでワクワクするんです!」
 赤間さんは街を歩いている時でも、魅力的な風合いの布を見かけると、 「この布で何かを作ってみたい!」と創作意欲が刺激され、 気付けば「この布を譲ってください!」と交渉を始めているそうだ。 これまでに譲ってもらった布は、豆腐屋で使い古した木綿や街路樹を巻く麻布などなど…。 様々な布に思いもよらぬ価値を見い出し、 創作を楽しんでいる赤間さんのもとにたくさんの布が集まってくるという。
「友人のご主人が着ていた背広やネクタイをリメイクできないかしらと持ち込まれることもあるんです。 ネクタイのように小さな布でも、ベストにリメイクできます。持ち込まれたネクタイも、 見ているだけで、その人の人生が見えてきておもしろいんですよ」
 友人からもらったエルメスのネクタイは、その赤の色に惹かれて、 バーテンダーさんが着ているようなベストをリメイクした。(左写真)
「この柄とこの柄、この布とこの布を組み合わせたらいいかしらと考えるのは、 自分の感性で楽しめる至福の時ですね」







-- コミュニケーションが広がる醍醐味。
 「布のリメイク」という創作活動を楽しむ赤間さんは、個展の開催も行っている。
「個展を開いて自分のことを発表できるってうれしいですね。 買いたいという人が現れたので値付けをしたら、意外なことに(笑) みなさん喜んで買ってくださるんです!自分の作品を評価して、買ってくださるっていうのは、 次へのエネルギーとなって、とても励みになりますね」
 赤間さんはリメイクの魅力について、次のようにも語ってくれた。
「着物は表地だけでなく、裏地が凝っているものが多いんです。 人に見えるかわからない裏地にこだわっているのが、慎ましやかでしゃれています。 そんな裏地をリメイク後、表地として用いることもあります。 控えめな裏方から主役に抜擢することで、布の新たな味わいを楽しむことができます。 洋服にリメイクする際にも、裏地にこだわり、表地に男物の大島紬を使い、 裏地にメリンスの男物の長襦袢を使用(左写真)してコートを仕立てたこともあります。 このリメイクという活動は奥が深くて、まだまだやめられませんね」
 遠い昔、どんな人が身にまとっていたのだろうかと、出会った布の背景に想いを馳せたり、 布との対話を楽しんでいる赤間さん。自分がリメイクしたものを着ていると、 他人からよく話しかけられるそうだ。
「自分の作品がきっかけで、コミュニケーションが広がっていく醍醐味も日々味わえるなんて、素敵でしょ」
 自分の作品を颯爽と着こなす赤間さんの姿には、日々の創作活動の楽しさと自信が溢れていた。
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