たくさんの絵を描いていく中で、多田さんにふと、とてつもない夢が芽生えてきた。
「いつの日か海外の美術館に作品を置いてもらえる日本人になりたいと思ったんです。
海外の美術館に行っても、あまり日本人の作品を見かけなかったですし、
もっと日本人の作品が海外の美術館に収蔵されてもいいのではと思い、
その先駆け的存在になろうと考えたのです」
美術館に作品を収蔵してもらうというのは、もちろんお願いして叶うことでもなく、
日本を代表する画家でも、実現している人は決して多くない。
そんなことを考えると、どんなに果てしない夢かと思うが、
2006年4月、なんと世界を代表する美術館、ロシア国立エルミタージュ美術館に多田さんの
作品『愛する心』が収蔵され、多田さんはみごとに夢を叶えてしまった。
さかのぼれば、2003年9月にロシアのサンクトペテルブルク建都
300年祭に多田さんが作品を出品したことが、幸運を呼び起こしてくれるきっかけとなった。
「サンクトペテルブルク建都300年祭に出した作品が、エルミタージュ
美術館の副館長・ウラジーミル・マトベーエフ氏の心に留まり、
WAC(世界芸術文化交流会)日本支部を経由して、エルミタージュ
美術館に私の絵を収蔵したいとお声掛けいただきました。
エルミタージュ美術館と私の間には何人もの人を介して申し出を受けた
のですが、その話を聞いたときはそれはもう本当に夢のようでした。
無欲にコツコツと活動を続けて
いると、思いがけず見出してくれる人が現れるものですね」
多田さんは、夢が現実となった瞬間のことをしみじみと語ってくれた。
-- セレンディピティーがいっぱい!
多田さんは毎朝7時ごろには起きて、活動的に動き回っている。
「マグロは常に泳いでいないと生きていられないと言うでしょ。
私も『じっとしてなさい』と言われたら、きっと死んでしまうわ(笑)。
家からぽーんと飛び出して、アクティブに行動し、日々努力していると、
幸運な偶然“セレンディピティー(serendipity)*”にたくさん出会うんですよ。
常に、絵のことを考えていたり、準備ができていると、チャンスに恵まれることが多いです」
家事に加えて、ご主人の会社の仕事を手伝ったり、絵を描くことだけでも相当忙しいだろうけれど、
それに加えて、若手のピアニストのコンサートをプロデュースしたり、
河童愛好家の集まりである「かっぱ村」の新聞を編集・発行したり、多田さんは、
実に幅広い分野で、ユニークな活動をしている。
「人から何か依頼されると断ることができないんです。
何でもおもしろがってやってしまうタイプなんですが、
唯一苦手なのが『片付け』。部屋を片付けなければならないと思うと、
前頭葉が痛くなるんです(笑)」
片付けが苦手だという多田さんだが、山積まれた書類の中から、
必要な書類は一発で取り出せ、周囲をびっくりさせているそうだ。
*思いがけないものを発見する能力。
(おとぎ話”The Three Princes Serendip”の主人公たちがこの能力をもっていることから、
イギリスの作家 H=ウォルポールが造った言葉。特に科学分野でケアレスミスなどから
思わぬ大発見を生む時などに使われる) [三省堂・デイリー新書辞典より引用]