残間里江子(プロデューサー)
私がまもなく50歳を迎えようとしていたある日、テレビ局に勤める友人と話していたら「テレビ界では50歳以上の人たちは圏外。ドラマティックな出来事など起きない人たち、流行化現象とも無縁の人たちと見なしているんだ」と言うのです。
自分にもまだ可能性の扉はあると思っていた私は少なからずショックでした。ああ、私にはもう新しい地平を切り拓く力はないのか。開いていたはずの扉が目の前からこの国ではパタパタと音をたてて閉じていくような気持でした。しばらくは鬱々していたのですが、考えてみれば50代以上の人たちは今やマジョリティー、5290万人もいるのです。プロデューサーの端くれとしては、この大きな塊りを見逃す手はないと思い直したのです。さらによく見れば特異な塊りを形成しながら独自の文化を創った「団塊の世代」が中核を成してもいます。数の威力を先導役に世の中を変えるには、今しかないと考えたのです。
長きにわたって支配的だった若者信仰を見直し、「大人」という新しい領域を開拓・提示する絶好のチャンスが到来しているのです。少子・高齢化社会を憂いているばかりいないで、日本を「世界一大人が幸福そうに生きている国」にしてもいいように思います。
この時代に生きる人々の「体感年齢」は戦前の七掛けと言われています。50歳の人は昔の35歳、60歳の人は42歳というわけです。ならば、このへんで「熟年」「シルバー」といったどこかに老いや衰えを潜ませたこれまでの固定的中高年イメージを打ち破って、新しいシニアイメージを創ろうではありませんか。
そのためには、先ず動くことです。自分の好きなことに向かって歩みを前に進めることです。閉じこもったり引きこもったりしている時間はありません。蕎麦打ち、ロクロ回しなど趣味に生きるのも素敵なことではありますが、せっかくそこまで行ったのなら、歩みをもう一歩先に進めて技や芸を世の中に広め、溶け込ませてほしいのです。「趣味の世界」だけで自己完結をしないで、その技を外の人たちに見せてほしいのです。年齢を重ねるとどうしても臆病になりがちです。知的に生きたいと思う人ほど恥をかきたくないから自分を晒す勇気が持てません。でも、50歳を過ぎたら自由に生きて構わないとは思いませんか。自分を縛っていたものを一つずつ解き放ち、青春のころ夢見た自分を実現させてもいい時期に来ているとは思いませんか。
いつまでも若く輝いている人は創造的です。創造的、つまりクリエイティブな人とは、既存の価値に依存することなく、新しいことに果敢にチャレンジする人です。変化を恐れない勇気を持つことです。
2005年7月7日七夕の日に設立した「
クリエイティブ・シニア」は、シニアのライフステージを広げ、新しい大人文化を創造するのが目的です。織姫と彦星が一年に一度出逢ったように、私たちも一年に一つずつでいいから確かな足跡を残していこう、そんな思いで創設した会社です。
そして今、ただ精神論だけで「頑張れ!」と檄を飛ばしていても何も始まらないと考え、自分の技や芸をいろんな人に見せたい、聴かせたいという人たちをプロデュースするプロジェクトをスタートさせることにしました。当面は展覧会、コンサート、書籍だけですが徐々に領域を広げていきたいと思っています。
自分でも見ていない未知の自分、眠っている技や芸、諦めかけていた夢を今ここで実現させて下さい。